読書メモ

脳のなかの幽霊、ふたたび

 脳障害によって起こる奇妙な症状と、症例研究からわかってきた脳のメカニズム(特に知覚や意識)についての本。『脳のなかの幽霊』(1999年)の続刊。

 前作よりもより一般向けに書かれたような印象ですが、面白さは相変わらずです。脳についての本は、奇妙な症例と、何故そのような現象が起こるのかを解説するものが主ですが、この本は、その上で更に、通常「科学の範疇ではない」とされる文化や芸術の分野にまで考察を広げています。そこがとても面白いのですよ。特に第3章(アートフルな脳)では、脳が芸術作品に「価値を感じる」仕組みについて大胆な考察がなされていて、一応絵描きのはしくれ(のつもり)である私にとっては、大変興味深かったです。

 脳に興味がある方には、絶対オススメ!の一冊。

『脳のなかの幽霊、ふたたび』
V・S・ラマチャンドラン(著)、山下篤子(訳)、角川書店、2005年。
ISBN4-04-791501-7

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カソウケンへようこそ

「ほぼ日刊イトイ新聞」に連載中の記事「主婦と科学」をまとめた本(単行本用に加筆あり)。
 カソウケンって、「科捜研」じゃなくて、「家総研」なのです。家庭科学総合研究所。
「おうちの中の非実用?サイエンス」というサブタイトルの通り、おうちのなか(特に台所?)に転がっている「科学な現象」について書かれています。「シミ抜き」とか「料理のとろみ」とか「カレーを寝かせる」とかね。非実用とか書いてあるけど、身近なことだけに「実践しようと思えば出来てしまう」面白さがあります。「やってみたいな~」とか思ってしまうんですよ。「マローブルー液(ハーブティー)」でpH調べたりとか、楽しそう♪(要は「紫キャベツ液」と同じなわけだけど ^^;)

 Webコンテンツの再録?なので、別に本でなくても読めますが、付録の「カソンケン版・元素周期表」は可愛くて楽しいですよ。

『カソウケン(家庭科学総合研究所)へようこそ』
内田麻理香、講談社、2005年。
ISBN4-06-154279-6

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『アシモフの科学者伝』

 小学館から発行されている「地球人ライブラリー」というシリーズのうちの1冊。1972年に共立出版より翻訳出版された『科学の壁を破った人たち』(原書は1959年、アメリカで発行された『Breakthroughs in Science』)に、新たに改訂・注釈を加えた本です。
 古代~近代までの科学者達を紹介しています。アシモフの生き生きとした筆致により、彼らの業績だけでなく、彼らの生い立ちや性格、研究姿勢まで伝わってくるようです。原書は半世紀前(!)のものですが、現代と事情が変わっている部分には注がつけられていて、情報の古さは気になりません。まぁ伝記ですし。
 因みに、紹介されているのは以下。自分用覚え書き。

アルキメデス(浮力の原理とか)
ヨハネス・グーテンベルク(活版印刷)
ニコラス・コペルニクス(天動説)
ウィリアム・ハーベイ(心臓および血液の流れについての研究)
ガリレオ・ガリレイ(振り子の原理、天動説)
アントン・ファン・レーウェンフック(顕微鏡を作って微生物や赤血球を発見・観察)
アイザック・ニュートン(万有引力)
ジェームズ・ワット(蒸気機関の改良)
アントワーヌ・ローラン・ラボアジェ(質量保存の法則を発見)
マイケル・ファラデー(電磁気学、電磁誘導の発見)
ジョゼフ・ヘンリー(モーターの発明)
ヘンリー・ベッセマー(鋳鉄から鋼鉄を安価に生産)
エドワード・ジェンナ(天然痘・牛痘の研究と種痘の実践)
ルイ・パスツール(細菌病原説)
グレゴール・ヨハン・メンデル(遺伝)
ウィリアム・ヘンリー・パーキン(化学染料・香料)
ウィルヘルム・コンラット・レントゲン(X線の発見)
アンリ・アントワーヌ・ベクレル(ウランの放射線に関する研究)
トーマス・エジソン(発明王)
パウル・エールリッヒ(化学療法)
チャールズ・ダーウィン(進化論)
アルフレッド・ラッセル・ウォレス(進化論)
マリー、ピエール・キュリー(ラジウムの発見など)
アルバート・アインシュタイン(相対性理論)
ジョージ・ワシントン・カーバー(農業。窒素固定。落花生からの合成品)
アービング・ラングミュアー(人工降雨)
アーネスト・ラザフォード(原子の構造、初の人工原子核反応)
アーネスト・オーランド・ローレンス(サイクロトロン)
ロバート・ハッチングス・ゴダート(初のロケット発射)

『アシモフの科学者伝』
アイザック・アシモフ(原作)木村繁(訳)竹内均(解説)、小学館、1995年。
ISBN4-09-252027-9
(K市中央図書館所蔵、2005.4.10.読了)

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『相対性理論の一世紀』

 アインシュタインが相対性理論(達成されなかったが、統一場理論も)を生み出した過程と、その後の物理学(量子力学や宇宙物理学)を概説した本。今年(2005年)は、特殊相対性理論が発表されて丁度100年ということで、その間の歴史を概観する形で書かれています。古典力学(ニュートン力学など)と近代の実験結果との矛盾点から、相対性理論が導かれ、さらに実際の観測によって証明される過程が、丁寧に説明されていて読みやすいです。方程式について解説している部分もありますが、それを読み飛ばしても概要は分かるようになっています。(「はじめに」に、「読み飛ばしてもわかる」って著者自身が書いてます。実際、私も方程式は眺めているだけでした。だって計量テンソルとかリッチ・テンソルとか言われてもよーわからんし……。)

 アインシュタインの伝記+一般向け解説書といった印象ですが、最新の宇宙理論にアインシュタイン方程式(と、幻の宇宙項)が生きていることにも触れ、超ひも理論などについてもわかりやすく書かれています。私は文系なのでで物理なんか理Ⅰでやっただけなんですが、SFによく出てくる(気がする)「ミンコフスキー空間」とか「相転移」とか「ヒッグス場」とか「弱い力」とか「強い力」とか「クォーク」とか、「聞いたことあるけど、いったい何なのさ~」な言葉が、この本を読んだだけで(一応)分かるようになりました。それだけでも読む価値有り。

 タイトル通り、この一世紀の物理学の流れにそって書かれているので、それ以前の物理学には触れていません。ので、先に触れた『アインシュタインの天使』と併読すると、古代~近代までの歴史と繋がって良いかもです。はい。

『相対性理論の一世紀』
広瀬立成、新潮社、2005年。
ISBN4-10-474301-1
(K市中央図書館所蔵、2005.4.9.読了)

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『アインシュタインの天使―はじめに落下ありき―』

 NHKスペシャル「アインシュタイン・ロマン」企画に関与した著者二人が、同ゼロ番組用に収録した対談を本にまとめたもの。ニュートンが万有引力を発見し、アインシュタインが一般相対性理論を導く契機となった「落ちる」という現象から、世界と物理学の全歴史を語り尽くそう――という壮大な対談だったとか。(そういえば、その対談の映像は、以前シリーズを一挙放送していた時に見た覚えがあります。対談する二人の背後で、リンゴが落ちたり浮かんだり、落下や加速度運動、重力をモチーフにした映像が流れるのが印象的でした。)
 古来真理とされてきたアリストテレス的世界観の矛盾点を、ガリレオやケプラー、ニュートン等、後の科学者が検証し突き崩してゆく過程がとてもわかりやすく書かれています。文章は読みやすく(話し言葉だし)、人名や学説については欄外に注釈が付いていて親切です。
 はっきりいって「アインシュタイン・ロマン」の副読本(笑)のようですが、これだけで読んでも面白い本だと思います。宮沢賢治(賢治作品にはアインシュタインからの影響が見られる)やファウストの話も出てくるし、理論物理学のおいしい所を文系目線(ここポイント)で書いていて、入門編としても良い感じかと……。

『アインシュタインの天使―はじめに落下ありき―』
金子務+荒俣宏、哲学書房、1991年。
ISBN4-88679-049-6
(K市中央図書館所蔵、2005.4.2.読了)

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